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【源氏物語文中の花】  巻44  『 竹河 』 桜・梅・柳

        ★… 【源氏物語文中の花】 巻44 『 竹河 』 桜・梅・柳 …★
巻名の「竹河」は 梅の花盛りに、薫君が玉鬘邸を訪問時、催馬楽の『竹河』の歌を謡った文句の一端から巻名になりました。
★文中) 竹河の橋うちいでし一節に 深き心の底は知りきや … 薫から玉鬘へ
☆意)「竹河」の歌詞の一節からわたしの深い心のうちを知っていただけましたか。
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催馬楽(さいばら)とは……→(古代歌謡の一つ)
平安時代初期に一般庶民の間で発生した歌謡が宮廷貴族の間に取り入れられたものである。
・元々、一般庶民で歌われていたものであることから、特に旋律は定まっていなかったが、大歌として宮廷に取り入れられ、雅楽に組み込まれてから何度か符の選定が行われ、平安時代中期には律・呂という2種類の旋法が定まった。
・歌詞には古代の素朴な恋愛などを歌ったものが多く、4句切れの旋頭歌など様々な歌詞の形体をなしている。
・催馬楽の歌い方は流派によって異なるが、伴奏に琵琶、箏(そう)、笙(しょう)などがもちいられ、舞はない。
・曲目は61曲のうち、呂(36曲)の中に梅枝・竹河がある。百科事典『ウィキペディア』参照

文中の季節は春の花の記載が主ですのでこの季節の寒桜・梅・芽吹き始めたしだれ柳(撮り置き写真ですが)をアップしておきましょう。
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〓簡単に物語〓
この物語は、源氏一族から離れた髭黒大臣家の老女房の語った話だというのです。意表をつく語りから始まるのです。「尚侍」であった「玉鬘」の数奇を極めた人生の、その後を語ります。つまり、髭黒太政大臣亡きあとの玉鬘一家のエピソードです。
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玉鬘は、亡き髭黒の大臣との間に、男子は左近中将・左中弁・藤侍従の三人、女子は大君・中の君の二人をもうけましたが、髭黒は人情味が乏しく無骨でかたくな、このためか、この一族は世間づきあいも疎く、大臣亡き後は栄えない一家となっていました。
夕霧右大臣だけは、かつての源氏の意向もあり、しかるべき折に訪ねておりました。玉鬘は三男二女を女手ひとつで育ててきました。経済的には豊かでしたが、世間から置き去りにされているような境遇のお暮らしでした。

玉鬘は子供達の将来に頭を悩ませています。元大臣家とはいえ、夫髭黒亡き後息子達は昇進の機会が無く、娘達は入内の後盾が無いのでした。姫君に熱心に求愛する夕霧の息子・蔵人少将は、玉鬘にもてなされ一家と親しい薫に嫉妬しています。玉鬘は昔の恋のつぐないに大君を冷泉院に参院させたいと思っています(かつて自分が冷泉院の意に背いたことの償いの気持ちがるからのようですが)蔵人の少将は、庭の桜を賭物にして碁を打つ大君と中の君の姿を垣間見て、いよいよ思いをつのらせましたが、玉鬘は、少将の焦燥、悲嘆をよそに、四月九日、大君を参院させてしまいます。

薫も大君が参院したことで、あらためて未練がましい気持ちを持つようになります
★文中)手にかくる ものにしあらば 藤の花 松よりまさる 色を見ましや …… 薫
☆意)(手に取ることができるものならば、藤の花よ、松より濃い紫の色を、空しく眺めてなどはいないだろう)
★文中)紫の 色はかよへど 藤の花 心にえこそ かからざりけれ……藤侍従
姉大君とは、血の通った姉弟ながら、思うに任せなかったのですと薫を気の毒に思っている。
★文中)竹河の その夜のことは 思ひ出づや しのぶばかりの 節はなけれど……大君の女房
☆意)竹河をお歌いになったあの夜のことを覚えておりますか、思い出すほどの出来事ではありませんが。
女房たちの同情を引くのである。
月日は流れ、薫も蔵人少将も立派に成人します。玉鬘はその姿を見るにつけ、今更ながら自分の意思とは違ってしまった。人に遅れをとった……と嘆いておいでになりました。主人亡き邸の心細さはいかんともしがたく、隣り合う紅梅大納言家の賑わいを見るにつけ、父大臣の盛時の頃のことが思い出され、思い通りにならないと嘆く毎日です。
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物語の終わりにきて、新人事が行われ夕霧が左大臣按察使大納言(紅梅)は右大臣兼左大将薫はすでに宰相中将となり、匂宮と並んで評判が高い三位中将(蔵人少将)が宰相(参議)に昇進して、左大臣の姫君と結婚します。一方、大君が宮仕えの気苦労から里下がりがちなのに対して、中の君は今上帝のもとで気楽な日々を過ごしているといいますが・・・後に・・・。登場人物が全て揃いました。

院の人となった大君は、最初こそ冷泉院の寵愛をうけていましたが、やがて弘徽殿女御の嫉妬を受けるようになります。一方、大君の参院を恨んだ今上帝からの懇望で玉鬘は中の君を帝に尚侍(女御、更衣ほどの格式の高さはありませんが帝にお仕えするお役目という役職)で帝に入内させます。しかし、この中の君も思うような幸せが得られず、息子たちにも非難され玉鬘は心痛めます。
『まとめ』
玉鬘邸を源氏一門につながる右大臣(紅梅)の隣に置いて盛大な大饗を眺めて、思うにまかせぬ宿縁を嘆く玉鬘をここで演出しています。説得力のある構成です。賢母として嘆く玉鬘の本音を書いていきます。
※大饗…大殿などの任官披露の祝宴。
                〇∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞〇
この巻の注目点は、玉鬘が薫は源氏の実子だ思いこんでいること。実際は柏木の子、薫は玉鬘の実の甥なのですが・・・。知らぬ事とはいえ、玉鬘は薫に貴方の和琴は、故仕の大臣(柏木の父、玉鬘の実父)の弾き方によく似ていらっしゃること。不思議なほど兄の柏木に似ていらっしゃいますね!と。思い切ったこの言葉に、薄々感づいている薫の心境はいかばかり・・・・。
by hime-teru | 2009-02-15 21:54 | 源氏物語(巻41~巻50) | Trackback | Comments(0)