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【源氏物語文中の花】  巻39 『 夕霧 』   稲(イネ)

          ★… 【 源氏物語文中の花 】  巻39  『 夕霧 』  稲(イネ) …★
                      撮影は,20,9,10 農ある町(宮代町の田園風景)
『イネ』は、夕霧の巻他、須磨・明石・手習にそれぞれ1カ所ずつ記述されています。稲は文学的に雁や鹿と取り合わせで歌や文章に取り上げられ、この巻では小野の田園風景の秋の風情を描写している。
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木枯の吹き払ひたるに、鹿はただ籬のもとにたたずみつつ、山田の引板にもおどろかず、色濃きどもの中に混じりて うち鳴くも愁へ顔なり。
 意)木枯らしが吹き払ったところに、鹿は籬のすぐそばにたたずんでは、山田の引板(百姓の鳴らす鳴子(なるこ)の音にも驚かず 色の濃くなったの中に入って鳴いているのも、もの悲しそうである。
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【須磨の巻】
★御馬ども近う立てて、見やりなる倉か何ぞなる取り出でて飼ふなどめづらしう見給ふ。
 意)幾頭ものお馬を近くに繋いで、向こうに見える倉か何かにあるを取り出して食べさせているのを珍しく御覧になる。
【明石の巻】
★入道、時時につけてけふをさかすべき渚の苫屋、行ひをして後世のことを思ひすましつべき山水のつらに、いかめしき堂を建てて三昧を行ひ、此世のまうけに秋の田の実を刈りをさめ、残りの齢積むべきの倉町どもなどおりおり所につけたる見所ありてし集めたり
意)渚(なぎさ)には風流な小亭(しょうてい)が作ってあり、山手のほうには、渓流に沿った場所に、入道がこもって後世(ごせ)の祈りをする三昧堂があって、老後のために蓄積してある財物(イネ)の倉庫町もある
【手習の巻】
門田の稲刈るとて、所につけたる物まねびしつゝ、若き女どもは歌うたひけうじあへり。
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…【稲】…
イネ科の一年草。日本をはじめアジア諸国で広く栽培されている作物。全世界の栽培面積はムギ類に次いで第2位、世界総人口の半分は米を主食にしている。原産地については諸説があり正確さは不明であるが、インドか東南アジアの一角とされ、3000年前には既にインドや中国で栽培されていたという。
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草丈は1m 内外に達し根もとで枝分れする。葉は広い線形で先端は次第に細まり長さ約30cm。基部は葉鞘となって長く茎を抱く。8~9月にかけて茎の先に円錐花序を出し分枝して多数の小穂をつける。小穂は1花から成り,外花穎と内花穎はいずれも船形で,いわゆる籾殻となる。芒(のぎ)は品種により長いものや欠くものもある。6本のおしべと1本のめしべがあり熟して穎に包まれたまま穎果(玄米)が出来る。
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現在世界で栽培されているイネは大別して、実が細長く粘りけの少いインド型(外来型)と実が短い楕円形でつやがあり粘りけの多い日本型がある。日本型のイネでは粘りけが多くて餅にするもち米と普通のうるち米とがあり、水田に適した水稲と畑作に適した陸稲(おかぼ)がある。
☆ 万葉集にはイネのことを「伊奈(いな)」と呼び漢字では稲を用いている。

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【雑感】
◆「瑞穂の国」に異変・・・。主食として、お餅やお菓子として、さらに発酵食品まで多彩な恩恵にあずかってきた「お米の国日本」先日からカビや農薬に汚染された事故米のニュース、不安は増すばかり。食料と偽って罪を承知で利鞘目的とは?怒りを隠せません。そもそも、工業用の食料(米)を役所が、役人が、食品会社に売ること自体おかしい。と言うより、売っていたことすら初めて消費者は知るのです。役所と業界のなれ合いの正体はこの業界に限ったことではなくなりました。なんと悲しいこと。日本人のモラルは何処へ行ってしまったのでしょうか?
↓このような被害にあっても頑張っている農家の方達がいらっしゃるというのに・・・。
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利権とリベートしか考えていない役人と経営者。しかるべき罰は受けるべきでしょう。消費者を平気で騙せるその神経、この事件に関わった役人は全て一掃して貰いたい。
だれを、何を・・信用していいのか?この現状に育ちゆく子供や孫達の行く末が心配でなりません。
↓子供達も米作り、頑張っているのに・・・心ない大人は後を絶たない。
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食の楽しさも・・・日ごと半減し「食欲の秋」も言葉のみ一人歩きしそうな寂しい食の秋、因みに今年は「ウナギ」も口にしませんでした。物言えぬささやかな抵抗です。 

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〓簡単に物語〓
この巻は源氏の息子「夕霧」の物語です。
★ 山里の あはれを添ふる 夕霧に立ち出むそらも なきここちして」
 意) 山里のもの侘しさを募らせるこの夕霧の中を帰って行く気にもなれない思いです。
巻名はこの歌によります

何事にも真面目で忠実な夕霧は柏木の死後、落葉の宮を親身になってお世話をしているうち、次第に恋心に変わり、律義者で誠実な性格ゆえ一途に落葉の宮への恋心が燃え上がっていくのです。そんな夕霧の心を知ってか知らずか、落葉の宮は彼の気配りには迷惑顔で心を閉ざし悶々としています。
秋の色濃い8月の中ごろ。山荘を訪れた夕霧は、ついに恋心を訴えます。夕暮れから深い霧がたちこめた事を口実に、強引にその山荘で一夜を明かしますが・・・落葉の宮は心を開かず夕霧は空しい朝を迎えます。母御息所は、祈祷師から夕霧が宿泊したことを聞いて心を痛めながらも夕霧の心変わりしない前に、二人が結ばれることを望みます・・・。

◆女郎花 萎るる野辺をいづことて 一夜ばかりの宿を借りけむ … 母御息所
意)女郎花が萎れている野辺をどういうおつもりで一夜だけの宿をお借りになったのでしょうか?。
「女郎花」を宮に「野辺」を小野山荘に喩え、二人の結婚を前提に、その後夕霧の訪れぬのを、なじる母御息所の手紙。それでも落葉の宮は心ここにあらず。娘の名誉を保てないと悲観した母御息所は絶望し亡くなってしまいます。一人残された落葉の宮は、茫然自失、母の死は夕霧のせいと夕霧を恨むようになります。

夕霧は、落葉の宮の気持ちが解けるのを気長に待ちながらも強引な説得が続きます。ついに業を煮やした夕霧は妻の嫉妬や嘆きや世間の目も、もはやないとばかり、妻の雲居の雁を怒らせながら落葉の宮のもとへ通い続け、ついに、まだ喪も明けないというのに、ものにしてしまいます。結局、落葉の宮は夕霧と再婚するしかないのでした。

このことが原因で最愛の妻の雲居の雁との間で派手なケンカになります。長年信じきっていた夫に裏切られた雲居雁は怒り、たまりかねて子供たちを連れて怒って里へ帰ってしまいます。
この感情は現代人と変わりありませんね。夕霧は結婚して10年。28歳です。当時の年齢感覚は今とは20年位の差があるといわれ、今の感覚では50歳位でしょうか?。

この色恋沙汰で実家に帰ってきた雲居の雁の父・太政大臣(源氏の政敵頭の中将)は、困ったことだと思いながらも、強いて夕霧のところに戻れとは言えないのです。落葉の宮は、亡き柏木(長男)の未亡人だからです。複雑な心境で胸を痛めながら気に病んだに違いありません。

一方、源氏も二人の噂を聞いて重苦しく受け止めますが術はありません。そしてまた、紫上も女の人生の宿命に悲しく胸を痛めるのでした。(二人は、それぞれの過去の自分を見つめているのです)
そうこうしている内に、雲居の雁も元のさやに収まり、夕霧は落葉の宮と雲居の雁と月に半分づつ通うという彼らしい合理主義を押し通します。

(平安時代に生まれなくて良かった~~と、ため息 … 私の感想)

真面目な男が急に若い女に血道(のぼせて)をあげ、家庭生活を狂わせる事件は、今も昔も変わりませんね。それにしても・・・並はずれたプレーボーイの源氏の息子に、よくもまぁ~、このような生真面目な男(子息)が授かったものです。これも紫式部の周到な計算なのでしょうか?
Commented by 蘭翁 at 2008-09-15 23:52 x
〓簡単に物語〓が、蘭翁にはとっても人気があります・・・・。満月、あいにくの厚雲でホノカに薄明るくなっていますので、あの辺に今、お月さんががいらっしゃるってことが分かります。
香子様の素早い対応の技、蘭翁見届けました。「あっぱれ・・・」
Commented by hime-teru at 2008-09-16 22:06
〓簡単に物語〓読んで頂いてありがとうございます。書く度にダラダラと長文になってしまい反省しています。要約することの難しさに悩みながら・・・。ボキャブラリーが乏しく、読書感想文は中々決められた字数内には書けませんのです(涙)
が、脳トレのつもりで、頑張っていますので、今後とも、宜しくでございます(^^)
Commented by nageire-fushe at 2008-09-20 08:09
稲・・日本人には欠かせないものですね。
しかも神聖なものでもあります。
お米は基本ですよね。
Commented by hime-teru at 2008-09-24 22:08
nageire-fusheさま。コメントありがとうございます。お礼の返信が今日になりもうしわけございません。稲、お米は日本人のエネルギーの源、食の主役として大切な役割を担ってきましたよね。
19日から小学校卒業?十周年記念同級会(1泊)出席のため郷里に帰っておりました。ついでに母親孝行もかねて・・・。1週間留守を致しました。
by hime-teru | 2008-09-15 19:25 | 源氏物語(巻31~巻40) | Trackback | Comments(4)