カテゴリ:源氏物語(巻41~巻50)( 20 )

【源氏物語巻名の花】 巻49  『宿木の巻』 やどりぎ

              ★… 【源氏物語巻名の花】 巻49 『 宿木の巻 』 やどりぎ …★
                       撮影はH20年、秋・京都宇治にて
文中★「宿り木と思ひ出でずは木のもとの 旅寝もいかにさびしからまし」
意)宿木の昔泊まった家を思い出さなかったら木の下の旅寝もどんなにか寂しかったことでしょう。
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〓〔宿り木〕〓
寄生木、ヤドリギ科の常緑小低木。ホヤ(寄生)トビヅタ(飛蔦)ともいう。ケヤキエノキ、サクラ、ミズナラその他の落葉広葉樹の樹上に寄生することから宿木・ヤドリギの名がある。よく枝分れして径40~60センチの球形。枝は緑色で二又から三又状に多数分枝し、関節があり乾くとばらばらになる。
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革質で厚く濃緑色で光沢がなく雌雄異株。2~3月、枝先の葉の間に淡黄色の小花を通常3個ずつ頂生して開く。果肉は粘りが強く鳥類によって他樹に運ばれ粘着して発芽する。北海道から九州、および朝鮮半島、中国に分布する。
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落葉した木に着生し常緑を保つヤドリギは、古代の人々にとって驚きであったとみえ、ヨーロッパ各国でセイヨウヤドリギの土着信仰が生じ、儀式に使われた。古代ケルト人のドルイド教では年初の月齢6日の夜、ヨーロッパナラに着生したセイヨウヤドリギを切り落とす神事があり、北欧では冬至の火祭りに光の神バルデルの人形とセイヨウヤドリギを火のなかに投げ光の新生を願った。
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常緑のヤドリギを春の女神や光の精の象徴として室内に飾る風習はクリスマスと結び付き現代に残る。 日本でもヤドリギは、常緑信仰の対象とされていた。大伴家持『万葉集』巻18で、宴(うたげ)の席で詠んでいる。ほよはヤドリギの古名で、髪に挿し長寿を祈る習俗があったことがわかる。
(↓桜の木に絡む宿り木、養分を吸い取られて、桜の木は大丈夫でしょうか?吉野では、やむを得ず、桜を守るため、宿り木の枝を落としているようです。宇治の桜もいつまでも綺麗に咲いてくれるよう願うばかりです)
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〓簡単に物語〓
帝(今上帝)は、最愛の娘「女二の宮」の将来を、薫に託そうと考えています。父朱雀帝が娘の女三の宮を源氏の降嫁させたように・・・。しかし、薫は気がすすみません。一方、夕霧は娘の六の君の婿を匂宮に決め、中宮の口添えもあり匂宮はしぶしぶ承知します。(承知せざるを得ない状況なのでした)
中の君の嘆きは深く今更ながら父の遺戒に背いて京に出てきたことを悔やみます。亡き姉君が決して宇治から出ようとしなかった生き方を思う毎日でしたが、既に中の君は、懐妊していたのです。

しぶしぶ夕霧の婿となった匂宮ですが六の君と会ってみると姿態はたいそう美しく、髪のさがりや頭の恰好などは、人より格別にすぐれて素晴らしく、色艶もつやつやとして堂々とした気品のある顔、目もとも美しく可愛らしい。何から何まで揃っていて器量のよい人なのである。匂宮は浮気な御性質ゆえ、まんざらでもありません。中の君の事を忘れているわけではないが・・・、次第に夜離れを重ねるようになり、中の君の嘆きは日に日に深まるばかりです。

思い余った中の君は、薫に手紙を出し、宇治へ連れていって欲しいと頼みます。未練がましく未だに大君を慕う薫の方は、中の君に大君の面影を重ね次第に心惹かれていきます。中の君と話ながら募る思いを抑えかね、その袖をとらえて我が心を訴えるのでした。そこへ帰ってきた匂宮は、中の君の衣に薫の芳香が移っていることを怪しみ責めますが、彼女は何事もなかったように匂宮をもてなします。
薫は、大君の供養に宇治の邸をなおし、大君の人形を作りたいと中の君に願いでます。薫の恋慕に悩むようになっていた中の君は、彼の接近を避けるべく異母妹に亡き大君によく似た人がいると「浮舟」の存在を告げます。ここで「浮舟」の登場です。

薫は宇治に出向き、浮舟の事を弁の尼に尋ねます。ここで、また弁の尼が登場真相を語らせます。早速、薫は弁の尼に浮舟への仲介を頼み込みます。

翌年二月、中の君が男児を出産したため匂宮の妻として誰からも重んじられるようになります。同じ頃、女二の宮と結婚した薫は、帝の婿として世人からねたみを買うほど羨望されますが・・・、当の本人の胸中は憂うつです。大君を思うあまり宇治の邸の造営に熱心なのです。薫は宇治で、偶然初瀬詣でからの帰りの浮舟を垣間見ます。息を呑み、薫が探し求めていた大君の面影を宿す形代(身代わり)そのものに驚きます。

作者は薫が中の君への横恋慕から危うい三角関係に陥ろうとするところで突然「浮舟」という女性を登場させてくるのです。「浮舟」は「八の宮」の娘で、大君・中の君とは異母妹の関係、八の宮は身分の低い母ゆえ宮家の名誉を考えてか彼女を認知しませんでした。宇治の八の宮邸を追われた浮舟母子は地方暮らしをしていたのです。

姉の大君が自分に向けられた薫の愛を妹の中の君に向けようとした同じことを、今度は中の君が、薫の横恋慕を避けようと「浮舟」に向け、彼女の運命をも変えてしまうのです。いかなる因果か?なんとも皮肉な物語なのです。

この巻には、菊・朝顔・女郎花・忘れ草(甘草)など出て参ります。
参考までに2006-12-06 【宿木の巻】
2006-07-30 【忘れ草】
アップ済みですのでご覧下さい。
by hime-teru | 2009-05-19 23:45 | 源氏物語(巻41~巻50) | Trackback | Comments(0)

【源氏物語巻名の花】 巻48 『早蕨』 蕨・土筆・・

              ★… 【源氏物語巻名の花】 巻‐48 『早蕨』 蕨・土筆・・…★
早蕨・さわらび』の巻名は、中の君が詠んだ和歌に因みます。↓写真は昨年秋「宇治」にて
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既に下記にてアップ済み。
蕨(ワラビ)2006-05-25 【蕨(ワラビ】  つくし(土筆・筆頭菜)2006-04-18 梅2006-04-28。お時間がありましたら覗いてみてくだされば幸いで御座います。
 「君にとてあまたの春をつみしかば常を忘れぬ初わらびなり」     阿闍梨
 「この春はたれにか見せむなき人のかたみにつめる峰のさわらび」    中の君
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『早蕨とは芽を出したばかりのワラビのことです。『現代でも※ワラビは山菜の王者的存在です。当時は想像以上にその存在が価値が高かったと思われます。平安時代には塩漬けのわらびがあったようです。物語には歌が3首、文章に2カ所出て来ます。春のわらび摘みは古くから人々の関心が深かったようですね。※土筆はつくしんぼ・筆の花。古称=つくづくしと呼ばれていました。また、薫中納言が二条院に参上なさいました折、匂宮と物思いに耽りながら、箏の琴を掻き鳴らしながら梅の香りを楽しんでおられる場面を記載しました※「梅」は他の巻でもアップ済みですので、こちらもお時間がおありになれば・・。』
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【簡単に物語】
匂宮との結婚を前にした宇治での中君の物語です。
宇治の山里に春の陽光がさしこんできました。父も姉も亡くした中の君の元に、父の法の師だった宇治山の阿闍梨から例年通りワラビやツクシが届けられた。中の君は阿闍梨の心づくしに涙を流します。匂宮は宇治通いが困難なので、大君の喪もあけた二月、中の君は、京の二条院の匂宮邸へひきとられることになりました。

薫は、中の君の後見役として細かな心配りをしますが、一方では、中の君を匂宮に譲ったことに後悔の念を禁じえません。大君を失った悲しさに身の置き所もない薫は、匂宮と中の君との幸せを願ってはいるものの、しだいに中君へ心が傾き、未練がましい思慕の情を断ち切れないでいるのです。

中の君は出家して宇治に残る女房の弁との別れを惜しみ不安を抱きなが上京します。京の二条院に移った中君に匂宮は細やかな愛情をそそぎます。が、匂宮と六の君との結婚を、右の大殿(夕霧)はこの月に予定していたのですが・・・・はてさて!!!。

右の大殿(夕霧)は、娘・六君を匂宮に嫁がせようと決めておられましたが、宮が意外な姫君を宇治よりお迎えになりましたので、大層不愉快に思っています。六の君と匂宮の婚儀を目論んでいた夕霧は二十日過ぎに六の君の裳着を決行、そして、ならば薫との縁組をと打診したが、「世の無常を目の前に見ましたので、この身こそが不吉に思われましてその気になれません」と薫の対応はそっけなかった。

薫中納言も近くの三条宮邸に移られました。桜の盛りのころ、二条院を訪れ中の君に親しく近付く薫に、匂宮は警戒の念を抱きはじめます。

薫と大君、匂宮と中の君と、空想した関係は大君の死によって崩れ、これからは中の君を巡り危険な三角関係?に陥ろうとしています。物語はまた新たな局面を迎えます。
by hime-teru | 2009-04-17 23:59 | 源氏物語(巻41~巻50) | Trackback | Comments(2)

【源氏物語の巻名】 巻47 『総角』 あげまき結び・etc 

         ★… 【源氏物語の巻名 風景】 巻‐47 『 総角・あげまき 』 あげまき結び・etc …★
                  ◎… あげまき結び・宇治の風景 …◎
宇治神社と宇治上神社には八の宮のモデルではないかといわれている莵道稚郎子(うじのわきいらつこ)が祭られていて、平等院の対岸でもあることから、付近一帯が八宮邸跡と想定され、総角の古跡とされてきたと思われます。
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薫が一周忌法要に事寄せて大君への気持ちを、几帳のほころびを通して見えた総角結びに託して詠んだ歌が巻名になっています。

★文中) あげまきに 長き契りを 結びこめ 同じ所に 縒りもあはなむ…薫
☆意) 総角結びのように末永い契りを結びこめて、あなたと私が長く寄り添えるようになりたいものだ。
「結ぶ」とか「契る」は、男女の愛の模様を語る言葉であり、「縒り」などは、愛の機微を伝えて、「縒りを戻した」などと使われています。「縒り」に「寄り」をかけて、催馬楽の「総角」が背景として引用されています。

★「あげまき」は、紐の結び方で終わりが両端に垂れますが、上と左右に輪が作られ中央で交互に結び合わさっています。古代の少年の髪形。頭髪を中央から二分し、耳の上で輪の形に束ね、二本の角のように結ったもの。又、少女の結髪の「あげまき」にも似ている。  ↓リハビリをかねて「あげまき結び」をしてみました。
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有史以前から人は「結び」を生活の中に取り入れてきました。日本では藤原時代以降急速に発展し、他の国に比べてその種類や用途、呼称も多種多様で、さまざまな「結び」が発案され、中でも「総角(あげまき)結び」は平安時代につくられた公家故実(くげこじつ:公家社会の礼法、装飾、調度などの慣習や取り決めを定めたもの)の中で、調度品の装飾、衣服の紐飾りとして数多く用いられました。平安貴族の日用品にも総角結びがふんだんに使われています。
また、鎌倉時代以降の武家社会においても、武士の象徴でもある兜の後部の飾りとして使われるなど、弓馬、武具関係などの飾りにも多く用いられました。数多い結びの中でも「総角結び」はいわば、装飾結びの代表格と言えます。
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〓【簡単に物語】〓
八の宮の一周忌間近、薫は宇治を訪れ大君に夜通し意中を訴えますが、大君は父宮の遺言を守って心を閉ざし続けます。人柄も身分も申し分ない薫君を信頼しきっている大君ですが、姉として我が身のことはさておき妹の幸せを思い中の君を薫と結婚させようと考えています。

一方、女房たちは「大君と薫」「中の君と匂宮」と結ばれるのが最も幸せと望んでいます。女房の弁は、薫を大君のもとへ導きますが、気配を察した大君は、中の君を残して逃れ出てしまいます。薫はむなしい思いで中の君とただただ語り明かすのみでした。

人が人を好きになる時、それを「惚(ほ)れる」とか「惚(ほう)ける」とも言います。薫はご本人も気づかぬ相当な「惚け」ぶりです。抜き差しならない恋の深みに足を取られています
。大君の意思を知り、考えあぐねた薫は、かねて中の君に関心をよせていた匂宮を宇治に導き、彼女のもとに忍ばせます。中の君を匂宮に譲り、自分は大君を得たいと思案したのです。匂宮は長い間の望みを遂げましたが・・・。しかし、その成り行きは薫の思惑に反して大君の態度を硬化させる事に。

匂宮は今上帝の第三皇子。父帝や母中宮の目が厳しく三日間は何とか無理を押して中の君のもとへ通いますが、その後は足が遠のきます。十月、匂宮は紅葉狩りを口実に宇治を訪れますが、母中宮が差し向けた御伴の人が離れず中の君の邸を目の前にしても会うことさえ出来ません。京に戻った匂宮は、中の君を思いながらも外出はさらに窮屈となり、宇治に通う事すらままなりません。

中の君や大君の落胆は大きく誠意のない薄情と映るのは無理からぬこと。それがもとで大君は病に臥す身となってしまいます。大君は従者の口から匂宮と夕霧の娘(六の宮)との縁談が進んでいる話しを聞き絶望します。そして、父宮の遺言に背いた自分を責め病気が益々重くなっていきます。26歳だったその日は豊明節会の日で、宇治は吹雪の夜であった
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薫は大君の看病にあたりますが、枕元で見守る薫に大君は妹の行末をたのみ、枯れるように息絶えるのです。薫は喪に服し49日の間大君を偲びます。匂宮に会おうとしない中の君、さてこの先は・・・・。

■「弁」という女房、「橋姫」で、薫に出生の秘密を告白し、この巻ではおせっかい老女房として、薫と大君の仲を取り込む役割を果たし、このあとの巻でも時々登場し物語の人間関係をつなぐ重要な役割を担うのです。
◆この巻の2007-08-07アップ済みの「月草の色なる御心なりけり」露草もご覧頂ければ幸いです。
by hime-teru | 2009-03-25 11:24 | 源氏物語(巻41~巻50) | Trackback | Comments(4)

【源氏物語巻名の花】 巻46 『椎本』 椎の木 

               ★… 【源氏物語巻名の花】 巻‐46 『椎本』 椎の木 …★
☆物語は匂宮も宇治への通い人となり、複雑な展開となっていきます。
◆文中)立ち寄らむ 蔭と頼みし 椎が本 むなしき床に なりにけるかな。
◇意)立ち寄るべき陰と頼りにしていた椎の本はお席もむなしく跡をとどめているだけで、空しい床になりました。我が師と頼りにしていた八の宮を失ったことで、薫は道心も失ってしまうのです。
巻名の「椎本」は、この歌によります。
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現在、宇治橋東詰め近くに「彼方神社」があり、境内に椎の大木があるようです。「宇治十帖」の碑の一つ「椎本之古墳」があるようですが・・・。昨年は日も暮れて訪ねることが出来ませんでした。
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〓椎〓
ブナ科の常緑高木。高さ25メートル、径1.5メートルに達する。樹皮は黒褐色。小枝は細かく分かれ、半球状の樹冠をつくる。5月下旬、雄花、雌花ともに穂状花序となり、クリの花に似た強い臭気がある。虫媒花。秋には実を結ぶ。堅果(ドングリ)の見分け方がいまいち勉強不足ですが、長さ約1㌢のものをツブラジイ(コジイ)とのこと。大木のシイの根元に落ちていました可愛いドングリです。
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若木の内から樹皮が割れ始め、堅果は大きく狭卵形、長さ約1.5㌢のものを変種スダジイ(イタジイ)食べられるようです。
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材は建築・器具に、樹皮は染料に用いる。また、椎茸栽培の原木とする。
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〓【簡単に物語】〓
物語は、宇治川を一つ隔てて、対岸と此岸(しがん)、栄枯の二人の宮が相対する構図になっています。匂宮は薫から宇治の姫君の話を聞き、長谷観音に参詣を思い立ち、その帰途、宇治の八の宮の姫君たちと接触できるかも知れないという期待をもって宇治の八の宮邸の対岸にある夕霧の別荘に中宿りをするのです。
宇治の中宿りの宿舎は、匂宮の外祖父にあたる光源氏の所領を嫡男の夕霧大臣が伝領し、知行している所の別荘を提供したと語られています。

現在の宇治平等院のあたりとされていますが、これは光源氏のモデルと言われている源融(みなもとの・とおる)が、この地に別邸を営んだという史実からのことです。
したがって、「憂し」の山里に住まう八の宮は、対岸の現在地、宇治神社のあたりに山荘を構えていたということになります。
↓写真の赤い朝霧橋の対岸と此岸。左対岸ー紅葉しているところが宇治神社、右ー宇治平等院方面。
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八の宮は、夕霧や子息達が匂宮一行を歓待する物音を川波を隔てて聞くにつけ昔の栄華をしのばずにはいられません。しかし、このところ健康がすぐれず、死期の近いことを予感して婚期もすぎた姫君たちの事を思いあぐねていました。
薫は中納言に昇進。ですが、出生の秘密を知ってからと言うものは、はかなく亡くなった実の父の罪ほろぼしの為と、ますます出家の意を強くして行きます。7月、久しぶりに宇治を訪れた薫に、待ち構えた八の宮は姫君たちの行末を託します。
死期を感じた八の宮は、姫君達に、宇治の地を捨て京に出て親の面目をつぶすような結婚などしてはならぬと諭します。親王としての自尊心でしょうか?人並みの結婚ならば、しないほうがまし、姫達にはあまりにも厳しい言葉です。そして、この父の遺訓が姫君の人生に大きく影を落とすことになるのです。

それにしても姫達の行末を託した薫への依頼は?結婚ではなく経済的援助、それとも精神的支えなのか? 23才の薫君に25才と23才の姫達の行末を託した八の宮。姉妹の後見を願うとは、どう考えても薫君は若すぎますね。意図が判りませんね。
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八の宮は、そのまま山寺にこもり8月20日ごろ不帰の客となります。悲嘆にくれる姫君達を薫は何かと心遣いをします。宇治への通い人となった匂宮からも弔問があり、忌が明けると同時に求愛の手紙が届いたりします。しかし、父宮の遺言を思い出にすがる姫君たちはどんな高貴な人の求愛にも応じようとしません。

年末のある雪の日。再び宇治を訪れた薫も胸中を大君に訴えますが、父の遺言を守り、取り合ってくれません。そんな大君に薫はますます心をひかれていきます。 一方、匂宮は、周囲から夕霧の娘六の宮との縁談を勧められますが、関心を示さず、宇治の姫君へ思いを燃やし、薫に姫君との間を仲介してほしいとせがみます。

翌年の夏、宇治を訪れた薫は、喪服姿の姉妹を垣間見て、とりわけ大君への思慕の情を一層強めます。この、姿を垣間見る場面で、「椎本」の巻は終わります。
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霧深き宇治の山荘を舞台に物語られる「宇治十帖」前半の登場人物が、すべて出揃いました。
by hime-teru | 2009-03-15 19:26 | 源氏物語(巻41~巻50) | Trackback | Comments(0)

【源氏物語巻名】 巻45  『橋姫』  宇治の風景

            ★… 【源氏物語巻名】 巻‐45 『 橋姫 』 宇治の風景 …★
                      撮影はH20,11,17 宇治にて
物語は終わったところから、【匂宮・紅梅・竹河】の巻にて登場人物の紹介を語り終え、薫君を主役に宇治を舞台に新しい「宇治十帖 」物語が始まります。 ↓宇治平等院
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◆そのころ、世に数まへられたまはぬ古宮おはしけり・・・・・・。
世間からは忘れられていらっしゃる古宮、つまりは「八の宮」の存在が告げられ「宇治十帖」は薫の恋の物語へと入っていきます。
源氏の異母弟で北の方が世を去った後も、妻を迎えることもせず、二人の姫を養育しながら宇治の山里に失意の生活を送っている八の宮。都から訪れる者もなく、ただ仏道に精進する日々、着古しの着物を召された可愛らしい二人の姫、侍う女房もなく、さびれた邸の一間に肩を寄せ合って暮らしています。
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自らの出生に疑念を抱き、出家の志をもっている「薫」は、この八の宮の噂を聞いて興味を持ち、やがて親交するようになります。ある日八の宮の留守中に訪れた薫は、有明けの月の光の下で、琴と琵琶を合奏する気品に満ちた優雅な姫君達の姿を垣間見て、薫中将は、「何と美しい……、宇治の橋姫のようだ。こんな山奥に、人の心を打つような隠れたことがあるのか……」と心惹かれ都にはない「女」の美しさを感じます。こうして、作者は、薫の君の目を通して巧みに二人の姫君を紹介していきます。そして、応対に出た「大君」と歌を詠み交しながら、思慮深い彼女に薫の君は思慕の情を抱き始めます。

【注目点】
物語の舞台である平安期の貴族社会では女性が他人に顔を見せることは御法度、女性自身もたしなみとして厳しくしつけられていました。男性にとっては垣根の隙間から意中の女性や、噂の高い女性を覗き見ること以外に、その女性を確かめる方法はなかったようで、一般には黙認されていたのです。物語の構成上の必要な手法として、こうした場面が多く用いられているのは、当時の物語の特徴です。
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薫が宇治へ通い人となり、ここで、鮮やかに物語の転換がはかられます。それは、大君に代わって応対に出てきた老女によって新展をみることになります。緊張した告白の場面が構成され、物語は、老女(弁の尼)の語るところから、自分は今は亡き柏木の乳母の子であり、母の妹は女三の宮(薫の母)の乳母であったと語り始めます。五、六年前から八の宮に仕えて、なんとか柏木の遺言を伝えたく機会を待っていたと云い、涙ながらに人に語れなかった秘事を今ここに明かそうとしています。

は弁の尼から柏木の最期の有様を聞き、形見の黴臭い袋を渡され、その中に柏木の名前で封印がされている遺書を恐る恐るご覧になる緊張した告白の場面 「自分は光源氏の子供ではなかったのだ…」薫は、足元から崩れる衝動にかられます。思わず母宮(女三の宮)の居間に薫は足を運ぶのですが・・・。過去のかげりなど、どこにもなく、童女のような「若やかなる様したる」母宮に、薫は何も申し上げられなく、やり場のない苦悩に追い込こまれていきます。

宇治川の急な流れに人生を重ねて宇治に通ううちに、薫は俗世間から離れたいという気持ちで宇治をお訪ねしているのだから、色めいたことを考えてはいけないと思いつつも、「大君」と歌を詠み交しながら、思慮深い彼女に薫の君は思慕の情が強くなっていきます。 ★橘橋の上から宇治橋を写す
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◆文中)「橋姫」の 心をくみて 高瀬さす 棹のしづくに 袖ぞ濡れぬるながめたまふらむかし …… 薫
意)姫君たちのお寂しい心をお察し申し上げて、浅瀬をこぐ舟の棹の雫ではありませんが、涙で袖を濡らしております。さぞ、もの思いに沈んでおられることでしょう。  ※この歌が巻名になっています。
◆文中)さしかへる 宇治の川をさ 朝夕の しづくや袖を 朽たし果つらむ身さへ浮きて ……大君
意)棹をさしかえ、行き来する宇治川の船頭は、朝夕、雫に袖を濡らして朽ちるように、私も涙で朽ち果てる思いです。涙で身が浮く思いです。  

〓「橋姫」は宇治橋の守護神です〓
巻名は『さむしろに衣片敷き今宵もや 我を待つらむ宇治の橋姫』…古今集から引用。現在、橋の三の間に張り出しがありますが、これは、もと橋姫を祀った所だと言われています。のちに橋の西詰めに祀り、明治に現在の地に移されました。  ↓★宇治橋から宇治川の上流をのぞむ。
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【堅物の薫君、感情を抑えきれず御所で匂宮に、宇治の山荘での一部始終を誇らしげに語り意図的に匂宮を刺激するのです。紫式部の男性観でしょうか?目が離せなくなっていきます】
by hime-teru | 2009-03-06 18:18 | 源氏物語(巻41~巻50) | Trackback | Comments(2)

【源氏物語文中の花】  巻44  『 竹河 』 桜・梅・柳

        ★… 【源氏物語文中の花】 巻44 『 竹河 』 桜・梅・柳 …★
巻名の「竹河」は 梅の花盛りに、薫君が玉鬘邸を訪問時、催馬楽の『竹河』の歌を謡った文句の一端から巻名になりました。
★文中) 竹河の橋うちいでし一節に 深き心の底は知りきや … 薫から玉鬘へ
☆意)「竹河」の歌詞の一節からわたしの深い心のうちを知っていただけましたか。
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催馬楽(さいばら)とは……→(古代歌謡の一つ)
平安時代初期に一般庶民の間で発生した歌謡が宮廷貴族の間に取り入れられたものである。
・元々、一般庶民で歌われていたものであることから、特に旋律は定まっていなかったが、大歌として宮廷に取り入れられ、雅楽に組み込まれてから何度か符の選定が行われ、平安時代中期には律・呂という2種類の旋法が定まった。
・歌詞には古代の素朴な恋愛などを歌ったものが多く、4句切れの旋頭歌など様々な歌詞の形体をなしている。
・催馬楽の歌い方は流派によって異なるが、伴奏に琵琶、箏(そう)、笙(しょう)などがもちいられ、舞はない。
・曲目は61曲のうち、呂(36曲)の中に梅枝・竹河がある。百科事典『ウィキペディア』参照

文中の季節は春の花の記載が主ですのでこの季節の寒桜・梅・芽吹き始めたしだれ柳(撮り置き写真ですが)をアップしておきましょう。
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〓簡単に物語〓
この物語は、源氏一族から離れた髭黒大臣家の老女房の語った話だというのです。意表をつく語りから始まるのです。「尚侍」であった「玉鬘」の数奇を極めた人生の、その後を語ります。つまり、髭黒太政大臣亡きあとの玉鬘一家のエピソードです。
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玉鬘は、亡き髭黒の大臣との間に、男子は左近中将・左中弁・藤侍従の三人、女子は大君・中の君の二人をもうけましたが、髭黒は人情味が乏しく無骨でかたくな、このためか、この一族は世間づきあいも疎く、大臣亡き後は栄えない一家となっていました。
夕霧右大臣だけは、かつての源氏の意向もあり、しかるべき折に訪ねておりました。玉鬘は三男二女を女手ひとつで育ててきました。経済的には豊かでしたが、世間から置き去りにされているような境遇のお暮らしでした。

玉鬘は子供達の将来に頭を悩ませています。元大臣家とはいえ、夫髭黒亡き後息子達は昇進の機会が無く、娘達は入内の後盾が無いのでした。姫君に熱心に求愛する夕霧の息子・蔵人少将は、玉鬘にもてなされ一家と親しい薫に嫉妬しています。玉鬘は昔の恋のつぐないに大君を冷泉院に参院させたいと思っています(かつて自分が冷泉院の意に背いたことの償いの気持ちがるからのようですが)蔵人の少将は、庭の桜を賭物にして碁を打つ大君と中の君の姿を垣間見て、いよいよ思いをつのらせましたが、玉鬘は、少将の焦燥、悲嘆をよそに、四月九日、大君を参院させてしまいます。

薫も大君が参院したことで、あらためて未練がましい気持ちを持つようになります
★文中)手にかくる ものにしあらば 藤の花 松よりまさる 色を見ましや …… 薫
☆意)(手に取ることができるものならば、藤の花よ、松より濃い紫の色を、空しく眺めてなどはいないだろう)
★文中)紫の 色はかよへど 藤の花 心にえこそ かからざりけれ……藤侍従
姉大君とは、血の通った姉弟ながら、思うに任せなかったのですと薫を気の毒に思っている。
★文中)竹河の その夜のことは 思ひ出づや しのぶばかりの 節はなけれど……大君の女房
☆意)竹河をお歌いになったあの夜のことを覚えておりますか、思い出すほどの出来事ではありませんが。
女房たちの同情を引くのである。
月日は流れ、薫も蔵人少将も立派に成人します。玉鬘はその姿を見るにつけ、今更ながら自分の意思とは違ってしまった。人に遅れをとった……と嘆いておいでになりました。主人亡き邸の心細さはいかんともしがたく、隣り合う紅梅大納言家の賑わいを見るにつけ、父大臣の盛時の頃のことが思い出され、思い通りにならないと嘆く毎日です。
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物語の終わりにきて、新人事が行われ夕霧が左大臣按察使大納言(紅梅)は右大臣兼左大将薫はすでに宰相中将となり、匂宮と並んで評判が高い三位中将(蔵人少将)が宰相(参議)に昇進して、左大臣の姫君と結婚します。一方、大君が宮仕えの気苦労から里下がりがちなのに対して、中の君は今上帝のもとで気楽な日々を過ごしているといいますが・・・後に・・・。登場人物が全て揃いました。

院の人となった大君は、最初こそ冷泉院の寵愛をうけていましたが、やがて弘徽殿女御の嫉妬を受けるようになります。一方、大君の参院を恨んだ今上帝からの懇望で玉鬘は中の君を帝に尚侍(女御、更衣ほどの格式の高さはありませんが帝にお仕えするお役目という役職)で帝に入内させます。しかし、この中の君も思うような幸せが得られず、息子たちにも非難され玉鬘は心痛めます。
『まとめ』
玉鬘邸を源氏一門につながる右大臣(紅梅)の隣に置いて盛大な大饗を眺めて、思うにまかせぬ宿縁を嘆く玉鬘をここで演出しています。説得力のある構成です。賢母として嘆く玉鬘の本音を書いていきます。
※大饗…大殿などの任官披露の祝宴。
                〇∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞〇
この巻の注目点は、玉鬘が薫は源氏の実子だ思いこんでいること。実際は柏木の子、薫は玉鬘の実の甥なのですが・・・。知らぬ事とはいえ、玉鬘は薫に貴方の和琴は、故仕の大臣(柏木の父、玉鬘の実父)の弾き方によく似ていらっしゃること。不思議なほど兄の柏木に似ていらっしゃいますね!と。思い切ったこの言葉に、薄々感づいている薫の心境はいかばかり・・・・。
by hime-teru | 2009-02-15 21:54 | 源氏物語(巻41~巻50) | Trackback | Comments(0)

【源氏物語巻名の花】 巻43  『紅梅』  紅梅

        ★… 【源氏物語巻名の花】 巻 43 『 紅梅 』 紅梅(こうばい) …★
巻名になるほどに、この巻は「梅の花」の表記が多い。既にアップ済みですので梅について記しておきます。『源氏物語』を演出する数々の植物のなかで松の表記は数え切れない。続いて桜・梅の花と続きます。他にフジ、ヤマブキ、ヤナギ。草花は全く登場してきません。
【梅】
紫式部の時代、ウメが新春の花として注目されていたようです。『源氏物語』文中ではサクラに続いて、いくつかの帖では開花日まで記されています。巻6「末摘花」では正月7日、白馬の節会の夜。又、二条院の若紫の姫君を訪れると毎年いち早く咲く紅梅は色づいている等。昔の正月は今の2月ですが、紅梅は白梅より少し開花が遅れるが早咲きで色づいている程度なら2月の上中旬にあたるのですが?温暖化の現代では季節を待たずに咲き始める。
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梅はバラ科サクラ属の落葉高木。中国中部の原産で日本で野生化した。『万葉集』ではウメといい、平安時代以後はすべてムメとよび、現代はウメと称し、300種以上品種があるようです。
日本に渡来したのは奈良時代以前のようで、当時から観梅が行われ『万葉集』では桜を凌ぐ3倍も取り上げられ歌に詠まれています。紅梅が顔を出すのは9世紀頃。早春、葉に先だって開く花は五弁で香気が高く、平安朝以降、特に香を賞でて詩歌に詠まれました。
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花の色は白・紅・薄紅、一重咲・八重咲など、多くの品種があり、果実は梅干あるいは梅漬とし材は緻密で堅く床柱,箱類,彫刻、器物になる。
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                  ★… さてさて、物語ですが …★
この巻の中心人物は紅梅大納言(按察大納言)先の頭の中将の次男(柏木の弟)一族のお話です。柏木は昔の頭の中将の長男でしたが、女三の宮さまとの不義事件が元で若くして亡くなり、家系を引き継いだのが弟君でした。正妻を亡くし真木柱(髭黒の娘)と再婚しています。正妻との間に姫君が二人(大君と中の君)真木柱の連れ子(蛍兵部卿宮の実娘=宮の御方)と邸に一緒に住んでいます。

三人の姫君に求婚する人が数多いて、帝や東宮からもお話しがあります。帝には明石の中宮が、東宮には夕霧右大臣の娘が待っています。紅梅大納言は、先妻腹の大君を帝の東宮に参内させ、中の君を匂宮にと思って、紅梅に歌を添えて匂宮に贈ったりしますが・・・。匂宮は気が乗らないようです。匂宮の関心は連れ子の宮の御方にあるからです。

大納言は宮の御方を我が子のように思っていますが、彼女は内気な性格ゆえ中々うち解けようとしません、わが境遇から考えて結婚自体も諦めており匂宮からの熱心な求婚にも応じようとしません。
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                      〓 文中の梅の記載 
★文中)軒近き紅梅の、いとおもしろく匂ひたるを見たまひて・・・
☆意)軒に近い紅梅が、たいそう美しく咲き匂っているのを御覧になって・・・

★文中) 心ありて風の匂はす園のにまづ 鴬の訪はずやあるべき……大納言の詠歌
☆意)考えがあって風が匂わす園の梅にさっそく鴬が来ないことがありましょうか?
「梅」は大納言の中の君、「鴬」は匂宮。二人の縁組を望む歌である。匂宮がお好みの梅の花にてお手紙のやりとりをなさるが・・・。

★文中) 園に匂へる紅の、色に取られて、香なむ、白き梅には劣れるといふめるを、いとかしこく、とり並べても咲きけるかな
☆意)園に咲き匂っている紅梅は、色に負けて、香は、白梅に劣ると言うようだが、とても見事に、色も香も揃って咲いているな」と匂宮はご賞美なさる。
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★文中)花の香を匂はす宿にとめゆかば色にめづとや人の咎めん……匂宮 御歌
☆意)花のいい匂いを漂わせているところなどをうっかり捜して行こうでもしたら、やはりあいつは色好みだと誰も目をつけはしないだろうか?
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大納言は、中々うち解けようとしない宮の御方を、我が娘の中の君よりも優れているのではないだろうか?と気を揉みます。母の真木柱は良縁と思いつつも、匂宮が宇治の八の宮の姫君(中の君)のところにお通いになっていることを知り匂宮の好色の噂に躊躇しています。
大納言の思いと匂宮を中心に、異腹の姉妹である中の君、宮の御方の行く末が語られていきます。例のごとく、それぞれの思惑が、それぞれに違って、この先どういう展開になるのか?「桜」に先んじて「紅梅」にも「魔性」が歩み寄ります。

ここで、唐突にも宇治十帖のヒロイン「八の宮の姫君」を前登場させています。
◆登場人物が歳月を重ねて登場してきます。真木柱が紅梅の大納言の妻に。薄幸の真木柱が仲の良いご夫婦での登場は驚きです。物語は姫君達のお嫁入りのお相手が帝、春宮、匂宮、薫、この四人に絞られていきます。
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by hime-teru | 2009-02-07 23:27 | 源氏物語(巻41~巻50) | Trackback | Comments(6)

【源氏物語文中の風景&花】 巻‐42  『匂兵部卿(匂宮 )  』 吾木香他・etc  

                ★… 【源氏物語文中の風景&花】  巻‐42 『匂兵部卿(匂宮)』 …★
                   ( 紅梅と桜・女郎花・萩・菊藤袴・吾木香・etc )
〓「宇治十帖」に入る前に〓
巻‐42『匂宮』は光源氏没後の物語。光源氏の縁者達のその後の話に入っていきます。源氏の君がこの世を去られてから九年の歳月が過ぎ、親友の致仕の大臣(昔の頭の中将)も、源氏の弟の蛍兵部卿の宮も既にこの世にはおいでになりません。

作者は「匂宮」から「紅梅」「竹河」の三巻は、「宇治十帖」の舞台転換の繋ぎとして書かれています。
・「匂宮」では、源氏直系の子孫、薫、匂宮の様子。
・「紅梅」では、故致仕大臣(頭の中将)の家のその後。
・「竹河」では、当主なき斜陽貴族、髭黒大臣家のこと。

以上の三巻は話題表出の巻にて、各家の子女たちの結婚問題を中心に語りながら新しい主人公が登場してきます。現帝と明石中宮の間に生まれた第三皇子(匂宮)、源氏と女三の宮の子であるが、源氏の次世代の物語主人公として語り継がれます。
巻名は世間での二人の評判が高く、誰もが婿にと望んでいる様子が書き出され、世評高い二人が世人から「匂ふ兵部卿、薫中将」ともてはやされるところから「にほふ兵部卿」の巻名がうまれました。

この巻に出て参りますは複数の巻でアップ済みですので、匂宮が紫の上から譲り受けた庭の紅梅と桜を大切に守りながら暮らし、ものげなき吾木香を取り上げて写真を添えておきます。
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              ◆〓さて、物語は、源氏一族の紹介から〓◆
・匂宮(三の宮)と姉の女一の宮は…〔二条院〕
・次期の春宮(皇太子)は夕霧の中姫君(次女)をめとって…〔御所〕
・今上帝の女一の宮は養女として…〔六条院の東の対〕に住んでおります。
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〓 主人公の生い立ち 〓
匂宮(にほふ兵部卿)
匂宮は現帝と明石中宮の間に生まれた第三皇子。明石中宮腹の女一の宮と共に紫の上に養育されていました(つまり光源氏の孫)。(紫の上は春の花を愛し自身も桜にたとえられていました)譲り受けた匂宮は庭の紅梅と桜を大切に守りながら暮らしています。薫に対抗して香をたきしめていたのでこの名前がついた。
(薫中将)
女三の宮と柏木との間に誕生した不義の子、源氏の配慮によって、冷泉院の猶子となり、秋好む中宮からも寵愛され冷泉院で元服が行われました。生まれつき香水を振りかけたようなお方で、この香りのお陰で、どこにいてもすぐに判ってしまう事が多く、ご自分では厄介なことだとお思いになっています。
冷泉院(源氏の隠し子)と夕霧の右大臣(源氏の子息)が後ろ盾になられて申し分のないご出世振りで、十四歳の二月に侍従、その年の秋には右近中将となり、冷泉院の対屋に曹司(部屋)も与えられました。このように院の後見もあって異例の昇進をしますが、薫は、うすうす自分の出生の秘密に気付き栄華も虚しいものと思い始めます。
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              ◆〓物語を簡単に→匂宮15歳~21歳、薫14歳~20歳のお話〓◆
薫君は不思議な清香の備わった人なので、兵部卿宮はうらやましく思召して、他のことよりも競争心をお持ちになって・・・
★文中) 春は梅の花園を眺めたまひ、 秋は世の人のめづる女郎花、小牡鹿の妻にすめる萩の露にも、をさをさ御心移したまはず、老を忘るる菊に、衰へゆく藤袴、ものげなき吾木香などは、いとすさまじき霜枯れのころほひまで思し捨てずなど、わざとめきて、香にめづる思ひをなむ、立てて好ましうおはしける。

★意) 宮は薫に対抗して人工的にすぐれた薫香をお召し物にお焚きしめになるのを朝夕のお仕事になさる・・・
御自邸の庭の春の花は梅を主にして、秋は人の愛する女郎花、小男鹿(さおしか)のつまにする萩の花などは顧みないで、不老の菊、衰えてゆく藤袴、見ばえのせぬ吾木香などという香のあるものを霜枯れの頃までもお愛し続けになるような風流をしておいでになるのであった。匂宮さまは、薫君の身体の匂いをうらやましく思い、負けずといい匂いのする薫物をふんだんお使いになっていらっしゃったのです。注「小男鹿」は、牡の鹿である。
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見ばえのせぬ吾木香。※不老の菊とは?どんな菊?。衰えてゆく藤袴にどんな香りが? 風流とは?・・・。雅な方の風流人のなさることは・・・。理解に苦しみますね。
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一方、薫君は、ご自分の出生の秘密を知り悩んでいます。故に影響してお若い頃から厭世的な考えをお持ち、何に対しても淡泊冷静な態度をとっておいででした。そして、出家の妨げになることを怖れて女性に近づくようなことは避けています。

年頃になり、冷泉院の皇女、女一の宮、夕霧の大臣の六の君は美しく世間では若い公達が憧れの的と女性達が登場してきます。浮気者と評判の匂宮さまも、平素は女性には冷淡な薫君も、この二人の姫には平常心ではいられない?のでした。

この前書きを背景に今は右大臣となって栄華を極め「まめ人」と評判の夕霧の大臣の家族へと話が進みます。夕霧夫人雲居の雁と落ち葉の宮さま。夕霧は律儀にも一日置きにお通いになるというお暮らしをしていらっしゃるようでございます。その夕霧には6人の娘がいます。その娘の一人を匂宮様にと望んでいますが匂宮はその気がありません。
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夕霧の六の君(脇腹の藤典侍の子)多くの娘たちの中で、美人という噂で、貴公子たちの関心を集めています。(藤典侍→源氏の従者惟光の娘)夕霧は六の君の将来の障りにならないようにと、落ち葉の宮さまにお預けになっているのでした。後の「宿木」巻で匂宮と結婚するのですが・・。

物語の雰囲気から、匂宮と薫の二人の貴公子は光源氏のように目映いほどの美男というほどではない???という。
by hime-teru | 2009-02-02 18:21 | 源氏物語(巻41~巻50) | Trackback | Comments(2)

【源氏物語文中の花】 巻41  『幻』  あふひ草・ 梅・ 菊・ 蓮・桜・・撫子・花橘・etc 

        ★… 【源氏物語文中の花】   巻41  『 幻 』  あふひ草・ 梅・ 菊・ 蓮・桜・・撫子・花橘・etc  …★
この巻は最愛の人、紫の上を喪った源氏の悲しくも寂しい一年を語ります。そして、光源氏を中心とした『物語の終焉』を迎えます。 

「春の光を見たまふにつけても、いとどくれまどひたるやうにのみ、御心ひとつは悲しさの改まるべくもあらぬに・・・」 源氏は寂しく悲しい新年を迎える書き出しから始まります。
庭先の木草や季節の移り変わり、紫上を回想しながら六条院の四季は巡ります。見るものすべてに亡き紫上を思い出す光源氏は折々の歌を詠みわが人生を振り返り、秋には紫上一周忌の法事を営み。年末には紫上と交わした文を焼き翌春の出家に備えます。
これまで何不自由なく女性遍歴を重ね自由に振る舞ってきた源氏ですが・・人の命だけは自由にすることは出来ません。
★文中)わが宿は 花もてはやす 人もなしなににか春の たづね来つらむ。
☆意)私の邸には、もう花を愛でる人もいませんのに何のために春が訪ねて来たのでしょう!。見舞いに訪れた蛍兵部卿宮と思い出の紅梅に亡き人の姿をしのぶ日々を送っています。

この巻には殊の外、春の季節が好きだった紫の上を忍びながら思い出を綴った巻ですので植物も、あふひ草(葵)・花橘・ 梅・・ 樺桜・ ベニヤマザクラ・撫子春から夏にかけての描写が多く出て参ります。 この巻には相応しくないかも知れませんが・・書かれている花をアップしておきます。
まずはから↓。
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◆春になり…
山吹・一重桜・八重桜盛り過ぎ、樺桜、は後れて色づき、とりわけ春の季節が好きな紫の上の思いにふけり、季節の移り変わりや自然の営みさえ疎ましく思う毎日の暮らしぶりです。匂宮はお祖母様(紫の上)のご遺言通り、お庭の梅や桜のお世話を焼くのに一生懸命でございました
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★文中)植ゑて見し 花のあるじも なき宿に知らずがほにて 来ゐる鶯 … 源氏
 ☆意)形見の紅梅に植えて楽しんだ主人もいないこの家にそれも知らぬげに鳴いている鶯よ。
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入道された女三の宮を訪れますが、人の世の哀歓は無縁のもの女宮の配慮のなさに失望。悲しみを分かちあえる人ではなく、明石の君との語らいに僅かに慰められますが夜も更かさずに帰ってきます。
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◆夏になり…
賀茂の祭りにも、今年は華やかに物見車を仕立てて祭り見物に出掛けるということもなく、五月雨の晴れ間の月明かりに夕霧が訪れ一周忌の近づいたことを語り合うのみ。七夕もむなしく過ぎ、8月、紫の上の一周忌がきました。今までよく生きてこられたものと源氏は回想します。
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菊の悲しみ… ★文中)もろともに おきゐし菊の 朝露もひとり袂に かかる秋かな。
 ☆意)紫の上と共に起きて賞でた、菊の朝露も今年の秋は私一人の袂にかかるだけです。一周忌には紫の上が生前書かせた極楽曼荼羅や経を供養しました。
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重陽の節句や五節も過ぎて年の暮れがせまると源氏の出家の決心は固く身の回りの片づけや紫の上と取り交わした消息などを涙ながらに焼き捨てますが・・・。(手紙はどれもこれも惜しいものばかりで懐かしい思いが次から次へと去来するが・・・。)雲居の煙となれ(今は何も甲斐のないこと、あの亡骸の昇った同じ大空の煙となってしまえ)思い切って全てを焼き尽くし、雲居を渡ってゆく雁の翼を、羨ましく見つめるのであった。
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大晦日となり…
源氏はわが一生も尽きようとしていることを思い感慨にふけります。
★文中)もの思ふと 過ぐる月日も 知らぬ間に 年もわが世も けふや尽きぬる … 源氏物語の中で源氏の詠んだ最後の歌です。
 ☆意)物思いをしていて、過ぎていく月日も知らずにいるうちに、気がついてみると、この一年も、わが人生も、今日で尽きてしまうのか。
★ 一日のほどのこと常よりことなるべくと、おきてさせたまふ。親王たち、大臣の御引出物、品々の禄どもなど何となう思しまうけてとぞ。』 の詞書きは終わっています。

                ○ ………………………………………………… ○

『華麗を極め源氏を中心とした物語は余韻を残して、この巻で終わります。その後の出家についても、その死についても一言も記述されていません。のちに続く「宇治の物語」で、源氏が嵯峨に隠れ住んで仏門に入り、やがて崩じたと回想されるにすぎません』 

                ○ …………………………………………………… ○

◆「幻」の巻のあと「雲隠」という巻名だけの巻があり、次の「匂宮」巻までの間には、8年間の歳月が経過しています。この間に源氏は出家し他界しているというのが通説のようです。

本来は「雲隠」の巻で、源氏の死を書くはずだったのが言語に絶することで巻名のみを掲げて本文を書かなかった・・・ということかも知れません。その巻名も作者が作ったものかどうかは不明とのこと。(もしそういう巻があるとすれば光源氏の出家と死を描く巻が書かれているはずですが・・・)

【終わりに】
『源氏物語』は、年齢を重ねる事に深い心の奥の感動があり、受け止め方が微妙に違って、新しい発見や感情が心を揺り動かします。

最愛の妻を亡くした源氏の悲嘆の物語で、源氏を中心とした物語は終わりましたが・・・源氏物語の冒頭の「桐壷」の巻でも、同じように源氏の父桐壷帝が、最愛の妻「桐壷の更衣」を亡くし悲嘆にくれるところから書き出され、源氏の一生も、ともに最愛の妻を亡くし「源氏の悲嘆の物語」で終わるという構成になっています。

紫式部が最初から意図して書いたものなのか!偶然なのか!・・・。判りませんが、いづれにしても源氏物語は「最愛の妻を亡くした夫の話で物語が始まり物語が終わる。という「愛と死」物語だといても過言ではありませんね。

私の源氏花アップ、巻名の「花や現代の風景を重ねての写真アップ」も、12月にて物語「巻41」まで終了出来ました。残された宇治十帖は来年からスタートです。「1卷~41巻」の並べ替え編集作業も少しずつ写真集に向けて夢を馳せています。
by hime-teru | 2008-12-18 23:51 | 源氏物語(巻41~巻50) | Trackback | Comments(5)

【源氏物語巻名の花】 巻43 『紅梅』  紅梅・こうばい

      ★… 【源氏物語巻名の花】 巻43 『 紅梅の巻 』  紅梅・こうばい …★     
◆この巻は「匂宮と紅梅大納言家の物語」
紅梅大納言は按察使大納言家、柏木(かしわぎ)の衛門督弟。子供のころから頭角を現わしていて、月日とともに地位や権力もできて世間の信望を集めていました。
「匂宮」から「紅梅」「竹河」の三巻は、それ以降のいわゆる「宇治十帖」に橋渡しをする「つなぎの物語」です。
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第二章 匂宮に和歌を贈る場面
★文中)東のつまに、軒近き紅梅の、いとおもしろく匂ひたるを見たまひて「 御前の花、心ばへありて見ゆめり」兵部卿宮、内裏におはすなり。一枝折りて参れ。
☆意)東の端に軒に近い紅梅が、たいそう美しく咲き匂っているのを御覧になって「お庭先の梅が、風情あるように見える」兵部卿宮は、宮中にいらっしゃるそうだ。一枝折って差し上げよ。
折が折とて堪えることができなかったのか、花を折らせて、急いで参上させなさる。
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★文中) 「心ありて風の匂はす園の梅にまづ 鴬の訪はずやあるべき」 …大納言の詠歌。
☆意)「考えがあって風が匂わす園の梅に さっそく鴬が来ないことがありましょうか」
「梅」は大納言の中の君、「鴬」は匂宮。二人の縁組を望む歌である。
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★文中) 「園に匂へる紅の色に取られて、香なむ、白き梅には劣れるといふめるを、いとかし
こく、とり並べても咲きけるかな」
☆意)「色はむろん紅梅がはなやかでよいが、香は白梅に劣るとされているのだが、これは両方とも備わっているね」 とおっしゃって、お心をとめていらっしゃる花なので効があってご賞美なさる。
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★文中)匂宮の大納言の贈歌への返歌。
「 花の香に誘はれぬべき身なりせば風のたよりを過ぐさましやは
☆意)「花の香に誘われそうな身であったら風の便りをそのまま黙っていましょうか」
★文中)大納言から匂宮への贈歌。
「 本つ香の匂へる君が袖触れば花もえならぬ名をや散らさむ
☆意)「もともとの香りが匂っていらっしゃるあなたが袖を振ると 花も素晴らしい評判を得ることでしょう
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★文中)匂宮の返歌「 花の香を匂はす宿に訪めゆかば色にめづとや人の咎めむ
☆意)「花の香を匂わしていらっしゃる宿に訪ねていったら好色な人だと人が咎めるのではないでしょうか」☆紅梅大納言の名前が巻名になっています。
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★文中)梅の花めでたまふ君なれば、あなたのつまの紅梅、いと盛りに見えしを、ただならで、折りてたてまつれたりしなり。
☆意)梅の花がお好きな方だから、あちらの座敷の前の紅梅が盛りで、あまりきれいだったから折って差し上げたのです。
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★文中)同じ花の名なれど 梅は生ひ出でけむ根こそあはれなれ。この宮などのめでたまふ、さることぞかし
☆意)同じ花だがどんな根があって高い香の花は咲くのかと思うと梅にも敬意を表したくなるからね。梅は匂宮(におうみや)がお好みになる花にできていますね。
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簡単に物語のあらすじ
この巻の中心人物、紅梅大納言(按察大納言)は、故致仕の大臣の次男で柏木の弟です。
・紅梅大納言の邸には三人の美しい姫君がいますが、うち一人は蛍宮の遺児で、宮の御方と呼ばれています。蛍宮の北の方だった真木柱と紅梅は再婚したのでした。実の娘同様に世話をしていますが、控えめな姫は継父の興味の視線を避けたく思い将来にも悲観的です。長女を春宮に入内させた紅梅は、中の君を匂宮にと思って紅梅に歌を添えて匂宮に贈ったりもしますが・・・。匂宮自身の関心は、連れ子の宮の御方にあるのでした。宮の御方自身もわが境遇から考えて、結婚自体をあきらめており匂宮からの熱心な求婚にも応じようとしません。母の真木柱も良縁と思っているが、匂宮の好色の噂(宇治の八宮の姫君(=大君・中の君)にも求愛すると聞き躊躇し不安に思っています。
by hime-teru | 2008-04-15 00:26 | 源氏物語(巻41~巻50) | Trackback | Comments(0)