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【源氏物語文中の花】 巻15 『 蓬生 』 杉 

           ★… 【源氏物語文中の花】 巻15 『蓬生』   …★
                 撮影は昨年、京都鞍馬山・秩父にて
この巻に1カ所「杉」が明記されています。古今集「我が庵は三輪の山もと恋しくはとぶらひ来ませ立てる門」を文章に引用しています。
因みに、この巻に記載されている植物(蓬・松・藤・浅茅・葎)はアップ済みですので省略致します。
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★今までこころみきこえつるを、 ならぬ木立のしるさに え過ぎでなむ、負けきこえにける」
 意)今まで様子をお伺い申し上げておりましたが、あのしるしのではないが、その木立がは っきりと目につきましたので通り過ぎることもできず根くらべに負けました」
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『杉』スギ科の常緑高木で日本特産。本州北端から屋久島まで分布。いたるところに植林され庭園、生垣、盆栽などによく用いられる。幹は直立し大きなものでは直径5m高さ50mに達する。樹皮は赤褐色で細長い薄片になってはげる。葉は枝に螺旋状になって密生し1~2cmの針状質が硬く先端はとがる。雌雄同株で春に開花して秋には結実する。雄花序は淡黄色枝の先端に密につく。雌花序は球形、枝の先端に熟すると径2~3cmで褐色木質の球果となる。
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材は柔らかく細工がしやすいうえ直幹が得やすいため日本では建築、船、橋、電柱、器具材、
樽、下駄などの細工物用に広く利用される。樹皮は屋根ふき用に、葉は線香や抹香の原料となる。秋田、伊豆天城山、天竜川流域、吉野・熊野、高知、宮崎(飫肥)などが有名な産地。年輪の幅や材質などに微妙な差があるといわれ用材としては秋田杉、吉野杉、屋久杉などが区別される。
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『杉』神木として古くは『万葉集』から詠まれてきました、
▲三輪(みわ)神社の
「味酒(うまさけ)を三輪の祝(はふり)がいはふ手触(てふ)れし罪か君に逢ひがたき」・丹波大女娘子(たにわのおおめおとめ)
▲石上布留(いそのかみふる)神社の
「石上布留の神杉神(かむすぎかむ)びにし我(あれ)やさらさら恋に逢ひにける」・作者未詳
▲平安時代に入って、『古今集』の「我が庵(いほ)は三輪の山もと恋しくはとぶらひ来ませ杉立てる門」・よみ人しらず 三輪明神の神婚説話と結び付いて明神の歌と伝承されるようになった。
▲伏見の稲荷神社ではは幸福をもたらすものとして有名で『山城国風土記』『蜻蛉日記』や『更級日記』にも「しるしの「杉」が記されている。
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『簡単に物語のあらすじ』
この巻は源氏28~29才。うまずらで長い真っ赤な鼻の想像を絶する醜女として登場した”末摘花”が源氏が須磨に退去している間、生活の窮乏に耐えながらも再会を待ち続け、再会した源氏が痛く感動し二条院に引き取って幸せに暮らすという暖かい物語になっています。

四月ごろに花散里を訪ねる道すがら形もないほどに荒れた大木が森のような邸の前にさしかかる。忍び歩きの思い出される艶な夕月夜であった。この荒れた屋敷が常陸の宮邸であることに気ずき、源氏は物哀れな気持ちになって車を止めさせた。道もないくらい深く茂った蓬の邸の姫君の変わらないお心を」と独り言をいってお車からお下りになると、御前の露を馬の鞭で払いながらお入りになる。
「松にかかった藤の花を見過ごしがたく思ったのは その松がわたしを待つというあなたの家の目じるしであったのですね!と前生の因縁を感じる源氏。何一つ優れた所等なく普通の男性ではとても堪えて拝見できないご容貌であるという末摘花を、なぜ!源氏は妻の一人として迎えられるのか? 不思議な巻ですが・・・。

源氏は二条東院に迎え入れるまでの一時的な宮邸の修理を行い、2年後 東の院という所に迎える。夫婦として同室で暮らすようなことはなかったが・・・、軽い扱いは少しもされなかった。
紫式部は生涯関わり合った全ての女性の面倒を見るという理想の殿方として光源氏を位置ずけています。果たして、このような男性が昔も!現代でも!存在するでしょうか?と思うと・・・。疑わしいですね~。
【常陸宮の姫君を源氏が訪ねるまでの日常】
父上の親王がお亡くなりになってからお世話する人もないお身の上で、もともと荒れていた宮邸は狐の棲みかとなって、浅茅は庭の表も見えぬほど茂り、蓬は軒の高さに達し、葎は西門、東門を閉じてしまうほど荒れ果て、くずれた土塀は牛や馬が踏みならしてしまい、春夏には無礼な牧童が放牧をしに来るという常陸宮邸の佇まいだが、それでも由緒ある宮家の誇りを持ち続けようと寝殿の中だけは塵は積もりっていても昔の装飾そのままに荘厳なお住まの中でひっそりと末摘花は過ごしています。ご兄弟の禅師の君(世にもまれな古風な方で同じ法師という中でも処世の道を知らない世離れした僧)だけが、たまに、お立ち寄りになる日々を送っていらっしゃいました。
Commented by 蘭翁 at 2008-08-13 00:31 x
残暑お見舞いを申し上げます。
>関わり合った全ての女性の面倒を見るという理想の殿方・・・
女性から見た理想でしょうか・・・いや、男性から見ても理想像ですね!もうチョット若いときに源氏を読んでいたら、蘭翁も「吾もかくありたい」と、思ったかもしれません。
杉と言えば、氷見の三尾杉が有名ですが、花粉を飛ばさない個体が見つかり、今は増殖に一生懸命です。
Commented by hime-teru at 2008-08-13 12:05
蘭翁さま。”残暑お見舞い”ありがとう御座います。
砺波の山居村のカイニョと呼ばれる屋敷林も杉が多かったように記憶しています。富山の家の屋敷林はどの家も杉が植えてありましたね。私の実家も杉が陽を遮り、夏はクーラーなしでも涼しかったですが・・・、先の台風で根こそぎ倒れてしまいました(家や蔵の屋根を直撃しなかったのが幸いでしたが) 家が丸裸になってしまったようで寂しく感じます。

我が家では息子も孫も杉の花粉症に悩まされていますが、花粉を飛ばさない個体が見つかり、今は増殖に一生懸命です。と伺うと嬉しいですね。
倒れた後に植えて欲しいと里帰りしたときに頼んでみようと思います。
(家を囲む屋敷林とゲンジボタルは幼い頃の回顧風景ですもの)
by hime-teru | 2008-08-10 22:30 | 源氏物語(巻11~巻20) | Trackback | Comments(2)