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【源氏物語巻名の花】  巻 15  『蓬生の巻』  蓬・葎

         ★… 【 源氏物語巻名の花 】  巻 15 『蓬生(よもぎう)』  蓬・葎 …★
光源氏、須磨明石離京時代、生活の窮乏に耐えながらじっと源氏との再会を待ち続けていた末摘花、昔風の気性の彼女は由緒ある宮家の誇りを持ち続けようと庭木や道具類を所望する者があっても手放そうとせず、邸は蓬(よもぎ)や葎むぐら)のしげる狐のすみかにもなって、盗人さえもよりつかないような貧しさの中で細々と暮らしていました。
↓よもぎ
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【文中より】
浅茅は庭の面も見えず、しげきは軒を争ひて生ひのぼる。は西東の御門を閉ぢこめたるぞ頼もしけれど、崩れがちなるめぐりの垣を馬、牛などの踏みならしたる道にて春夏になれば、放ち飼ふ総角の心さへぞ、めざましき。
☆意)浅茅は庭の表面も見えず生い茂った蓬生は軒と争って成長している。は西と東の御門を鎖し固めているのは心強いが崩れかかった周囲の土築を馬、牛などが踏みならした道にして春夏ともなると、放ち飼いする子どもの料簡もけしからぬことである。
と、彼女の生活の困窮ぶりや邸の荒廃ぶりは悲惨なまでに語られ、由緒ある宮家の姫君とはいえ、女一人で生きることの現実を厳しくとらえられています。
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◆『常陸宮邸の寂寥』
夕日をふせぐ蓬葎の蔭に深う積もりて 越の白山思ひやらるる雪のうちに出で入る下人だになくて、つれづれと眺めたまふ。
☆意)夕日をさえぎる雑草や葎の蔭に深く積もって越の白山が思いやられる雪の中で出入りする下人さえもいなくて所在なく物思いに沈んでいらっしゃる。
・・・・そこへ都に戻った源氏が訪ねます。とてもお踏み分けになれそうにない、ひどい蓬生の露けさでございます。露を少し払わせて、お入りあそばすように」とお供の惟光(これみつ)。
  ↓ 葎(ムグラ)
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★ 尋ねても我こそ訪はめ道もなく 深きのもとの心を。 源氏
☆意)誰も訪ねませんがわたしこそは訪問しましょう 道もないくらい深く茂ったの宿の姫君の変わらないお心を。←巻名になりました。
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再会した源氏が変わらぬ心の美しさに打たれ二条院に引き取って幸せに暮らすという暖かい展開になります。
by hime-teru | 2007-02-16 22:59 | 源氏物語(巻11~巻20) | Trackback | Comments(0)