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【源氏物語文中の花】 … 巻9 葵 ・ 28 野分 ・39 夕霧 『 竜胆・りんどう 』

      ★… 【 源氏物語文中の花 】 …  巻9(葵) 巻28(野分) 巻39(夕霧) 『竜胆・りんどう』 …★
                  撮影はH18,11,3 我が家にて
★巻9「葵の巻」の文中
枯れたる下草の中に、竜胆、撫子などの咲き出でたるをおらせ給て、中将の立ち給ぬる後に、若君の御乳母の宰相の君して、「草枯れのまがきに残るなでしこを別れし秋のかたみとぞ見る。匂ひ劣りてや御覧ぜらるらむ」と聞こえ給へり。
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意)源氏は枯れた植え込みの草の中に竜胆(りんどう)や撫子の咲いているのを見て、折らせたのを、中将が帰ったあとで、若君の乳母(めのと)の宰相の君を使いにして、宮様のお居間へ持たせてやった。 草枯れの籬(まがき)に残る撫子を 別れし秋の形見とぞ見る。この花は比較にならないものとあなた様のお目には見えるのでございましょう。
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★巻28「野分の巻」の文中
わはらはべなど、おかしき衵姿うちとけて、心とゞめとりわき植へ給ふ竜胆、朝顔のはいまじれる籬も、みな散り乱れたるを、とかく引き出で尋めるなるべし。

意)童女などは、美しい衵姿にくつろいで、心をこめて特別にお植えになった龍胆や、朝顔の蔓が這いまつわっている籬垣も、みな散り乱れているのを、あれこれと引き出して、元の姿を求めているのであろう。
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★巻39「夕霧の巻」の文中
草むらの虫のみぞより所なげに鳴きよはりて、枯れたる草の下より竜胆のわれひとりのみ心ながう這ひ出でて露けく見ゆるなど、みな例のころのことなれど、おりから所からにや、いとたへがたきほどのものがなしさなり。

意)叢の虫だけが、頼りなさそうに鳴き弱って、枯れた草の下から、龍胆が、自分だけ茎を長く延ばして、露に濡れて見えるなど、みないつもの時節のことであるが、折柄か場所柄か、実に我慢できないほどの、もの悲しさである。
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【竜胆】 りんどう
リンドウ科の多年草。茎は高さ20~60㌢葉はササに似ている披針形。山野に自生している。9~11月、日がさすと茎頂や上部の葉腋に青紫色または紅紫色の花を上向きに開く。花冠は筒状の鐘形。
名は中国名の竜胆を音読みしたリュウタンがリンドウになったという。
リンドウ属は花冠は五裂し裂片と裂片の間に副片があり蜜腺は子房の基部につく。花は紫色が主で、白、赤、黄色などもあり、近年リンドウと称して出回っている北海道産の山掘り苗が大量に長野、福島、岩手県に入り地元のリンドウと交配、作出されたもののようです。栽培は寒・高冷地では容易であるが暖地では株の維持がやや困難である。
         ☆ ↓ 撮影は日光にて(昨年撮影したものです)
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漢方では根を竜胆(りゆうたん)といい、苦味性健胃剤として用いる。これは、根に苦味配糖体ゲンチオピクリン、アルカロイドのゲンチアニンなどが含有されることから味が非常に苦く、唾液(だえき)と胃液の分泌や腸の蠕動(ぜんどう)を高め、食欲を盛んにする作用があるためである。又、竜胆には肝胆の熱を除く作用があるとして目が赤く腫れ耳が聞こえなくなったり、ひきつけたりといった症状や黄疸の治療に用いる。
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竜胆は『万葉集』には歌われていないが、源氏物語や、『枕草子』には「竜胆は枝さしなどもむつかしげなれど、こと花はみな霜枯れはてたるに、いと花やかなる色合ひにてさし出(い)でたる、いとをかし」と書かれているところから、古くから親しまれてきたお花のようです。
Commented by mikenekohanten at 2006-11-09 19:19
はゆです♪
リンドウってとっても苦いらしいですね(*゜―゜)
それもそのはず、あのとっても苦いお茶のセンブリのお仲間。
それを聞くと妙に納得しちゃいます( ̄▽ ̄;)ヾ
Commented by hime-teru at 2006-11-14 22:19
はゆさん、コメントのお返事、今日になり申し訳ありません。m(_ _)m
お祝い事で用事が続きPCに向かう時間がとれなくて・・・・。

竜胆は漢方の鎮痛薬、咳(せき)どめ)胃けいれんなどの治療薬にも使われているようですね。私は苦いセンブリのお茶を飲んだことがありませんので、苦みの度合いが分からないのですが・・・。

「良薬は口に苦し」ですね。
by hime-teru | 2006-11-09 00:12 | 源氏物語(巻1~巻10) | Trackback | Comments(2)